X51.ORG : "死体なき国の死体写真家" -- 釣崎清隆インタビュー
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"死体なき国の死体写真家" -- 釣崎清隆インタビュー

── 戦場に死体がない、というのは意外です。とすると、いわゆる戦場カメラマンっていうのはどうやって撮ってるんですかね。

釣崎 うん、だから彼らは死体は撮らないわけじゃん。やっぱり兵士だったり、子供たちだったりするわけじゃない。俺はそれには興味ないから・・・いや、なくはないんだけど、戦場の子供たちなんて、それこそ藤原紀香でも撮れるんだから。といいつつ俺も子供は撮るけどね。

turisaki11t.jpg── そこまで行って暇ならば、副業的に戦場カメラマンとして活動してみようとは思わないんですか。

釣崎 いや、あの世界っていうのはほんとに閉鎖的というか、シビアな世界なんだよ。フリーがまともに仕事するのは難しいね。みんな縄張りをもってて、それを侵すと嫌がらせされたりね、誤った情報を吹き込まれたりすることもある。情報を共有して広く世界に問うてこそのジャーナリストだろうって思うけど、フリーだとまず仲間だとは思ってくれないんだよ。で、フリーはフリー同士でチームをつくって行動したりするわけだけどね。でも、気持ちは分かるんだよ。だってさ、バックパッカーに毛が生えたようなフリーのカメラマンなんて、ずっと1カ所に張り付いて取材してる通信社の記者からしてみれば、はた迷惑なんだよ。

その現場の作法とか、現地のローカル・ルールとか、知らないからね。実際に昔、人を殺しかけたこともあるよ。一緒に行動してたカメラマンに、撮るなって言われた死体があって、俺はいい気になってそれ撮っちゃったんだけどさ、それで一斉に民兵4人にAK47の銃口を向けられて、俺と一緒にいたカメラマンも奴らからすれば同じ仲間に見えるわけじゃん。俺だけならまだしも、親切に立ち回り方を教えてくれたカメラマンも一緒に殺されるところだったよ。逆の立場だったらたまったもんじゃないよ。まあ、そのときは民兵と口喧嘩だけですんだけど。

あと、戦場に行くとジャーナリストはほとんど防弾チョッキを着てるけど、俺は男気で丸腰だ、なんてのは絶対に通用しないから。でもとりあえず仕方ないから無防備のまま取材に行くじゃん。で、取材地で戦闘が始まったら、無意識のうちに近くにいた防弾チョッキ着てる奴を"盾"にしながら写真撮ってる自分に気付いてみたりしてね。基本的にカメラマンって、写真を撮ってるうちは何をやっても正当化されると思ってるだろ?

── なるほど。でも釣崎さんのように、戦場カメラマンでもなく、アーティストとして死体を撮るために戦場や海外に行く写真家って、世界的には他にいるんですか。

釣崎 いないだろうね。俺は知らない。タイやメキシコの死体カメラマンも国内だけだよな。だからどこに行っても奇妙に見られるというか珍しがられる。戦場カメラマンとも、タイ、メキシコの死体パパラッチとも違う。

── 釣崎さんは今回の『ジャンクフィルム』でも色んな現場で死体を撮影してますが、例えば戦場であれ、町の中であれ、死に方や遺体の状況に関わらず、等しく死体として写真を撮れるんですか。

釣崎 そんなわけないじゃん。

── 例えば戦場のように、人が死ぬ必然性がある場所には魅力を感じないとか。

turisaki5t.jpg釣崎 いや、俺が戦場にいつかないのは、ほんとに死体が撮れないからだよ。むしろ都市の方が撮れる。あとは、戦場ってめちゃくちゃ金がかかるんだよ。だから知り合いに何人か日本人の戦場カメラマンもいるけどさ、みんなテレビ局から金引っ張って行くわけ。そして、戦場で慣れないビデオカメラを回し、やりたくもないレポートまでやらされるわけだよ。スチール・カメラマンなのにね。まあ彼らはジャーナリストだから、好き好んでレポートしてるのかもしれないけど、俺はイヤだね。テレビなんかに頭下げて利用されたくないし、テレビの金を充てにしないと自分の本来の仕事ができないっていうのがイヤだ。それも基本Vカメ優先で撮れってことだろう? 

やっぱ戦場カメラマンっていうのは、俺とは決定的に人種が違うと思う。彼らの多くはむちゃくちゃモラリストだからね。何の衒いもなく正義を声高に叫ぶし。いや、それはいいんだよ、全然。尊敬もするしさ。うざいけど基本的にはあるべき方向だと思う。そうかと思うと、10人に1人くらい、やくざなね、格好だけのさ、ハンティング・ワールドなんか着て、いいカメラを何台も首からぶらさげた、絵に描いたような悪いカメラマンがいるんだよ。

── 戦場でハンティング・ワールドはまずいですね(笑)

釣崎 典型的なやばいところに行けば行くほどさ、そういう漫画みたいな奴がいるんだよ。最前線なんかさ、銃弾くぐり抜けてやっとこさ前線に出たと思ったら、年寄りの有名なカメラマンばっかなの。みんな防弾チョッキなんか着てないで白いシャツ1枚で自由にのびのび撮影してるわけ。それこそ弾の方が彼らをよけてるような、なにか山奥で神仙かなにかに出会ったような妙な気分だったよ。



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